「トロッコ問題」が示すパラドックス

5人が線路上で動けない状態にあり、そこにトロッコが向かっていると想像してほしい。
あなたはポイントを切り替えてトロッコを側線に引き込み、その5人の命を救う、という方法を選択できる。
ただしその場合は、切り替えた側線上で1人がトロッコにひかれてしまう。

この問題は反出生主義の哲学者デイヴィッド・ベネターの利得表を使って解く事ができますね。
ベネターは「苦痛があるのは悪い状態で、苦痛がないのは良い状態。快楽があるのは良いが、快楽がないのは悪くはない」と考え、快楽があるより苦痛がない状態の方が望ましいと主張しました。
快楽が苦痛より多いか」ではなく「そもそも苦痛がない方が良い」からこそ「全ての人間は生まれてこない方が良い」とベネターは説いています。この利得表こそがベネター理論の根幹なのです。

利得表
この利得表に基づいて判断するならば、トロッコ問題で「5人を助けない」選択をするのは「悪くない」のに対して「一人の人間を犠牲にする」のは明白に「悪い」事であるから、やはり5人を見殺しにするのが正解なのです。
一人を殺して5人を助けるのが倫理的に許されるならば、健康な人間から勝手に臓器を取り出して必要とする患者に臓器移植するなんて行為も正当化されてしまう。

大多数のために少数を犠牲にするのが許されるのは、それをしなければ最終的に全員が死んでしまう場合であって、戦争とかの極めて限定的な条件下だけだ。
戦争であっても、よっぽど追い詰められていなければやるべきじゃない。実際アメリカ軍とかは戦場に取り残された兵士を見捨てたりはしない。犠牲を払っても必ず救出に行く。

「見殺しにする方が悪」だなどと言うのは世界に対する認識不足だ。今までに誰の事も見殺しにしてないとでも言うのか?世界中で起き続けている貧困・飢餓・戦争・災害・疫病などの災厄を我々は見て見ぬ振りして生活しているに過ぎない。
死の原因は生まれてくる事だ。見殺しにしなくてはならないシチュエーションをなくす唯一の手段が「反出生主義」なのです!!

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